高次脳機能障害|生活期の支援
高次脳機能障害について
回復は「機能を戻すこと」だけではなく、生活の中で使える形へ再構築するプロセスです。
PEAKFORMは、評価・運動療法・代償戦略を統合し、本人とご家族の生活再編を支援します。
高次脳機能障害の定義(公式)
以下は、定義文を「原文そのまま」で掲載するための枠です。
脳損傷に起因する認知障害の総称であり、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などを主症状とする
外見上わかりにくいことが多く、身体機能が比較的保たれていても、日常生活・就労・社会参加に影響が及ぶことがあります。
何が起きている状態か(症状の理解)
高次脳機能は、注意を向ける・情報を保持する・状況を理解して判断し行動を調整する、といった
「生活を組み立てるための脳の働き」です。
脳卒中、外傷性脳損傷、低酸素脳症などで脳が損傷すると、これらを担う神経ネットワークの連携が乱れ、
「分かっているのにできない」「できていたことが続かない」といった困りごとが生じます。
注意障害
- 集中が続かない/気が散りやすい
- 同時に複数のことが難しい(分割注意)
- すぐ疲れる(脳の処理負荷が高い)
注意が不安定になると、記憶・判断・動作の正確性にも影響が及びます。
記憶障害
- 新しいことが定着しにくい
- 約束・予定・手順を保持しづらい
- 「さっき」の出来事が抜け落ちる
努力不足ではなく、記憶の固定・検索に関わる仕組みが影響を受けています。
遂行機能障害
- 段取りが組めない/優先順位がつけづらい
- 途中で止まる/切り替えが難しい
- 予想外の変化に対応しづらい
「計画→実行→修正」の流れが途切れやすくなります。
社会的行動障害
- 感情の調整が難しい
- 対人場面で誤解が生じやすい
- 衝動性・こだわりが強くなることがある
本人の性格変化のように見えても、脳の調整機能の問題として理解が必要です。
半側空間無視
反対側の空間への注意が向きにくく、見落としやぶつかりが増えます(視力の問題ではなく注意の障害)。
失行
筋力は保たれていても、目的のある動作や手順がうまく遂行できない状態です(計画・動作記憶の障害)。
失語
話す・聞く・読む・書くに影響が出る状態です(知的能力ではなく言語ネットワークの損傷)。
回復には時間がかかる理由
高次脳機能障害の回復は、「壊れた機能が元に戻る」だけではなく、別の回路や方法で補いながら
再学習して定着させるプロセスです。そのため、数か月〜数年単位での変化となることもあります。
急性期
安全確保、基本動作、生活上のリスク管理
亜急性期
注意・記憶・遂行機能の改善傾向、生活動作の再獲得
生活期(慢性期)
代償戦略の定着、生活リズムの再構築、社会参加へ
「良い日と悪い日」を繰り返しながら前進することが少なくありません。
回復を焦らせるより、生活の中で成功しやすい形へ設計し直すことが重要です。
現在有効とされるアプローチ
1)評価に基づくリハビリテーション
- 注意・記憶・遂行機能の特性を把握
- 生活動作(ADL/IADL)に落とし込む
- 反復だけでなく「使える形」へ汎化
2)環境調整(情報量の設計)
- 刺激を減らす/整理整頓
- 手順の視覚化(カード・チェックリスト)
- 課題を分割し、成功率を上げる
3)運動療法が重要な理由(脳血流・BDNF)
運動は筋力のためだけではありません。適切な運動は脳血流(CBF)を高め、注意・覚醒レベルを整え、
脳が働きやすい土台をつくります。
また運動は、学習と可塑性を支える物質であるBDNF(脳由来神経栄養因子)を介して、
脳が変化しやすい状態を促します。
重要なのは「どんな運動でも良い」わけではなく、評価に基づき、認知機能と統合された形で設計することです。
4)「運動 × 認知」の統合
PEAKFORMでは、注意・判断・空間認知・修正を伴う「意味のある運動」を重視します。
身体を通して脳の使い方を再学習し、生活動作へつなげていきます。
例:設計の考え方
- 単純反復 → 目的・ルール・切り替えを加える
- 1課題 → 2課題(ただし負荷は適正に)
- 訓練室内 → 実生活の場面に近づける
生活を組み立てるための代償戦略(合理的な回復戦略)
可視化
予定・手順・期限を見える形に。色分け、アラーム、定位置化。
分割と順序化
大きな作業を小さなステップへ。手順カードで迷いを減らす。
刺激の最小化
同時課題を減らす。音・視覚情報を整理し、成功率を上げる。
家族向け|よくある誤解 Q&A
高次脳機能障害は外見上わかりにくいことが多く、本人も家族も「説明しづらい苦しさ」を抱えやすい領域です。
よくある誤解を、整理してお伝えします。
Q1. 見た目は元気そうなのに、なぜできないことが多いのですか?
高次脳機能障害は「外から見えにくい障害」です。筋力や歩行などが保たれていても、
注意・情報整理・計画といった“生活の土台となる脳の働き”が影響を受けていることがあります。
見えている=問題がない、ではなく、頭の中の処理がうまくいかない状態として理解が必要です。
Q2. 怠けている、やる気がないように見えてしまいます…
多くの場合、意欲の問題ではありません。注意が続かない・疲れやすい・判断に時間がかかることで、
行動が遅れたり、途中で止まったりします。本人なりに脳の処理負荷と戦っているケースが少なくありません。
Q3. 何度も同じことを忘れるのは、努力不足ですか?
記憶の仕組みそのものが影響を受けています。メモ、アラーム、チェックリストなどの外部補助は、
「甘え」ではなく回復戦略の一部です。できる形に生活を設計し直すことが重要です。
Q4. 時間が経てば自然に元に戻りますか?
時間とともに改善する側面はありますが、自然回復だけでは生活の困りごとが残りやすいのが現実です。
生活の中で再学習し、環境調整と代償戦略を定着させていく関わりが重要になります。
Q5. 家族はどう関わればよいのでしょうか?
「できないこと」を指摘するより、「できる形」を一緒に探すことが回復と生活安定につながります。
手順の整理、予定の可視化、刺激を減らす環境づくりは、本人の成功体験を増やすための重要な支援です。
ご家族が抱え込まないことも重要です。本人・家族・支援者が同じ前提を共有し、
生活の設計を少しずつ更新していくことが、長期的な安定につながります。
医療機関との役割の違い(生活期で起きるギャップ)
医療機関が担う役割
- 診断・検査・治療(医学的管理)
- 急性期〜回復期の医学的リハビリ
- 合併症管理、安全管理
「病態を評価し、医学的に治療・管理する」ことが中心となります。
生活期に残りやすい課題
- 家での段取り・家事・買い物が回らない
- 疲労で崩れる/外出や就労が続かない
- 家族関係・対人関係のストレスが増える
「医療が終わった」ことと「生活が整った」ことは一致しない場合があります。
PEAKFORM が担う役割
PEAKFORM は医療の代替ではありません。診断・治療は医療機関が担い、
PEAKFORM は生活を組み立て直すことに重点を置きます。
生活で使える力へ
評価→課題設定→練習→生活場面へ汎化。継続できる形に落とし込みます。
運動×認知の統合
脳血流・可塑性を意識し、注意・判断を伴う運動で再学習を支えます。
代償戦略と環境調整
チェックリストや動線設計など、生活の設計そのものを支援します。
対象になりやすい困りごと(例)
病名や障害名だけでは、日常の困りごとは説明しきれないことがあります。
PEAKFORMでは「生活の中で何が起きているか」から整理します。
生活の中で起きやすいこと
- 段取りが組めず、家事や買い物が回らない
- 予定を忘れる/同じ確認を繰り返す
- 複数のことを同時にすると混乱しやすい
- 外出後にどっと疲れる、翌日まで影響が残る
- 探し物が増える(定位置が保てない)
注意・記憶・遂行機能の負荷が高いと「できない」「続かない」が増えます。
対人・社会参加で起きやすいこと
- 会話が噛み合いにくい/話が飛ぶと言われる
- 焦ると口数が減る/逆に強く言い過ぎてしまう
- 職場・家庭で誤解が増え、関係がぎくしゃくする
- 新しい手順やルール変更に適応しづらい
- 疲労とストレスで生活リズムが崩れる
「性格」ではなく、情報処理・感情調整の負荷として起きる場合があります。
半側空間無視がある場合
ぶつかる・見落とす・食事や読書で片側が抜けるなど。生活動線や環境の手がかりを含めて設計します。
失行がある場合
道具の使い方や手順が崩れるなど。動作を分解し、意味づけと順序を再構築します。
失語がある場合
伝える・理解するが難しいなど。視覚支援や代替手段(ジェスチャー等)も含めて支援します。
「何ができないか」より先に、「どんな場面で崩れるか」を特定すると対応策は具体化できます。
PEAKFORMはその切り分けから伴走します。
初回の流れ(評価 → 提案 → 実施)
生活期の支援では「やることを増やす」より、まず
負荷のかかり方(注意・記憶・段取り・疲労)を把握し、
生活の成功率が上がる設計をつくることが重要です。
STEP 1|状況整理(問診・生活の棚卸し)
いつ、どんな場面で困るかを具体化します。本人・ご家族それぞれの視点を統合し、
「症状」ではなく「生活の現象」として整理します。
STEP 2|評価(認知特性 × 身体特性)
注意の持続・分割、情報処理の負荷、手順化の難しさ、疲労の出方などを確認します。
あわせて、姿勢・歩行・空間認知に関わる身体側の要因も評価します。
STEP 3|方針提案(優先順位と設計)
改善を狙う部分(回復)と、先に整える部分(代償・環境調整)を分け、
生活が回るための優先順位を提示します。ご家族ができる関わり方も具体化します。
STEP 4|実施(運動 × 認知 × 生活への汎化)
脳血流・可塑性を踏まえた運動課題と、注意・判断を伴う実践課題を統合します。
机上で終わらせず、日常動作へ落とし込む形で進めます。
STEP 5|見直し(小さく検証して更新)
「うまくいった/崩れた」を一緒に振り返り、環境・手順・負荷を微調整します。
生活の成功率を上げるために、設計を更新し続けます。
まずは「生活の困りごと」から相談してください
病院でのリハビリが一区切りしても、生活には課題が残ることがあります。
PEAKFORMは、本人とご家族が同じ前提を共有できるよう整理し、実践へつなげます。
回復とは、脳の機能が戻ることではなく、生活が回り出すこと。
できない理由を責めるより、できる設計に変える。その積み重ねが、長期的な安定につながります。